明け果てたこのくだらない年も最早兎や角言うには酷すぎるほどに時を中央から薪割ったみたいな2月を鼓動してやがる、右往左往する人魂共が口々にやれこれが美しいとかやれ今年はこの花の祭りこそが真髄だとか抜かすその宴から遠ざかって黙祷しているとでも勘違いを食らっているのかもしれないという不名誉な決めつけに呪いの彩色を遠隔で撃ち込むだけの理性だ、喪に服すなんて文明過剰な行為を産まれてこの灰、一度もしでかした事などないのだから一秒たりとも一熱も喪になど服してはいないのだ、恋に喪、季節に喪、くだらない、みくびるな。

年末年始に彼女が地元に帰っていた事に酷く絶望する理由が自分にはわからないのだけれども、そこで他者の感情であるようなその感覚に困り果てたり悲しんでみせたりすることは万が一もないのである。

ああ、私はついに、戦争終わりに帰郷する生存者の美しさに敬礼できずに、唾を花に吐くだけの、なにもしてはいなかったのにそれまでずっと生き延びてしまった村の不具の野良男のような魂なのだな。

彼女がきっと長年奪われつづけてきただろうその安堵の幸福の営みに帰る姿を美しいと思えないのだから、もうほんとうにある部分では人間ではないのだろうなとただ思うのだけれど、なぜかその事に寂しさも悲しさもないのだから、酷い話だが、この心持ちに或る「彼女が帰郷する事に彼女の人間的な弱さをその敗北を感じる」と酷く苦い確信が鈍く光つづけるのである。

それにしてもこの男はそれではこの女にどうしていろと言うのだろうか?、
男はこの女に連れの男がいないのが我慢ならないようである。
年末年始だというのに恋人との逃亡もせずに、自分をどこまでも好いてくれるような輩の大群とじゃれあっていたり、離縁乙女放浪花火で血の恩恵を放棄しどこかの都市に遊び逃げるなどもせずに、いい歳の女がなぜにただ故郷の優しい血のゆりかごのなかに帰るのか、そんな子供じみた事をしているのか、家族と過ごしながらファンの質問に答える、そんな彼女の指先の仕草に人間的なあまりにも人間的な熱と情けなさとダサさを感じて、ああ、あやしあやされる絶対的な愛情関係のおままごとに終始しているようなその残酷さを放棄した緩やかな生き方の姿勢に酷くつまらなさを感じる、そうこの男はぬかす。

この世界の普通の人々の行為をしているだけで酷く吐き気がするのだからと、唐突にまくしたてる、この男はもう終わりなのだ、完全に、人間的意識化で彼女を愛する事はないだろう、そう自覚せしめたからには、人類の血潮紛いの形跡だけが残るあらゆる遺跡のうえで自殺したい衝動にかられるのである、文明前夜の遠吠えで自慰を月に刺す。
この魂の奇才破損はいよいよ末路の値上げだ。

彼女にはあの都市が似合っているし、彼女はあそこにとどまるべきだ、あの都市から離れるな、そう呟き通して夜に食われる。

除夜の鐘とは上手く美しく人間どもを騙せる言葉装飾をこしらえたものだ、永遠だとか、除夜の鐘だとか口走る生き物、つかまるか、
俺からは夜を除けないぞ、除かしてたまるものか、それの鼓動の高鳴りが今年のはじまりだった。

夜を除きにくる鐘と刺し違えた夜明けの温度は人肌みたいに糞だった。

夜を護るのだ。夜明けを許せずに。