抱くように見殺した、乙女の幸福の波紋が、僕を幾度も、僕だけを殺しつづける、気高く堕ちる余生の道の角で終わりなく仕返しで、棄てられた書物に生える黒点を一つづつめぐりながら、真新しさを蘇り、女だけが繰り返した、僕は、かろうじてあるその指先で、彼女たちの瞼の裏の夢に憧れた、嫁ぐ女の絶対の強度にきっと、永遠に打ち勝つことはできないだろうと、弱く脆いこの噛み締めだけがいつも気づいている、永遠に受け入れつづけるものは絶望でしかない、それさえも、女だけが連れてくる、絶望さえ、それさえも女からの贈り物なのか、

集落の女が次々に消えてゆく、神隠しでも連続殺人でもなく、闇夜が晴れるその時にそっとどこまでも穏やかに、おれがこうして紙に血を吐く合間に、愛してもいなかった、かわいくもなかった、名を知るだけの女でも、集落の女が嫁ぐだけで、いつもおれは消えてしまいたくなった、この世でいちばん大切な光を今誰かに奪われてしまったかのように死にたくなった、明日が消滅してしまったかのように目のまえが真っ暗になった、もうこの先、誰にも愛してもらえない気がして、女が消えてゆく、いつも僕は死にたくなる、集落の女が嫁ぐたびに、たとえひとかけらも愛した事がない女でも、女が嫁ぐたびに、僕はすぐにも消えてしまいたくなる、靴屋の娘が嫁いだ時おれは靴を脱ぎ捨てた、肉屋の娘が嫁いだときおれはもう肉を喰いたくなくなった、娘が嫁いでゆく、おれを通り越してゆく、誰にも愛してもらえない気がする、光の娘が嫁いだとき、光が消えた、夜の娘が嫁いだ、夜が消えた、すべてを宿した女たちがどこかへ嫁いでゆく、娘がどこかに嫁いでゆく、女がどこかへ発ってゆくのだ、いままでと変わらぬその姿をこんなにも残して、きょうまでのやさしさをこんなにも輝かして、すべての女が嫁いでゆく、女はどこかへ発ってゆくのだ、こんなにも変わらぬ肉体を残して、それでも女たちは、どこかへ行ってしまったのだ、女たちがきらめくたびにおれは絶叫した、おれが山を焼きあの赤い泉質の美しく淀む警鐘を壊した今も、ただ女が発ってゆくのだ、また一人またひとりと、おれを通り越して、女が嫁いでゆくのだ、