起きてみれば18時10分を過ぎているという正気はいとも簡単に君への雫で臨海する。

6時までにはと、寝られずに雨戸を閉め切った部屋には朝日は到達しないのだから、きょうは一滴も光を浴びてはいないようだ。

光合成無きたぬき。

風邪というものは熱性のものであればえらく快楽を伴って辛いのだか気持ち良いのだかのその境界線をいったりきたりできるのだから、熱性の風邪ならばよかったと思うのだけれど、
こうして、ただ喉の形状を認識できるくらいに爛れ、炎症を起こしているだけの風邪というものは痛みだけしかないのだから嫌いである。

思えば、爛れる肌も炎症を起こす器官も、彼女のそうした病状を見ることはほとんど無理なのだが、例えば、彼女の肌は恐ろしく美しく、出来物のようなものを見たことはほとんどない。
喉の炎症はかすかに、弱まる声として聴いた事はあるのだが、
まさか、あのかわいい口をあ〜んと開けてみせて、炎症花のように真っ赤に色づく粘膜を見ることなど許されているはずはないのだ永遠に。

しかし、驚くことに、彼女の爛れや炎症を、ましてや熱性の病状を目撃したこといや、体験してしまった事があると感じられるのは、やはり彼女がそうした瞬間までもを踊っていたという事に尽きる。

彼女は表現を遂行する瞬間に爛れたし炎症すら仄かに香らせた、
呼吸器官が熱性の風邪に襲われるかのような正常のリズムを失い、おもむろに光さえ誘って。。。

彼女の表現融解はあらゆる病の輪郭を光と闇の結合物で虐めるような危険に満ちていた。

彼女は一瞬で平熱から50度に燃える肉体にまで達した。
瞳のなかの虹彩が炎症を起こして虹色に咲いた。
四肢が咳をする。

命の病。

生に至る病。

乙女、
不治の病。