彼女から牙が生えるという第永久次性徴期とでも呼べるだろう変貌の到達をもしも俺が観測できたと大口叩いて語れる瞬間があるとすれば、彼女の胸や肉体がまるで地殻変動を起こすかのようなむず痒さと震度によって「今まさに変貌に向けて出発」しているという汽笛を瞳や肉体に灯すといった、その些細でもっとも重要な変貌への変容の微動を彼女が痙攣ダンスできたその時だろう、牙に肉体の神経全てが繋がる瞬間を見ることができたその時だろう、

スーツなんていう人類喪服を着込んで面構え美貌で彼女の目のまえに送還した俺は、あの瞬間、瞬きも極力封印し彼女を観測しつづけたんだ!、好物だからな!、彼女がかわいさを覆してなにかに変貌しちまうその瞬間こそが俺のもっとも欲しがっている瞬間だからな!、あの劇場の客席のなかのどんな野郎よりも信管握りしめて見守っていたさ!、ああ!、そうだ!、変貌!、変貌!、俺と彼女を唯一つなげてくれたその瞬間!、馬鹿な、馬鹿な、いつだ?、いつ起きた?、おまえらが語るその変貌はいつ起きた?、あの化粧のような「とってつけた」肉体の描写か?、あの彼女が踊ってみせた変貌模写のダンスの事か?、あの形ある「装備」する材質不明の小道具の牙のことか?、ああ、彼女の変貌の材質は彼女の激情でなければならない!、今まさに血を奪われたその透明な管のなかに新たに流れる牙の肉体窒素!、その洪水じゃなきゃいけないんだ!、それこそが「変貌」だ!、変貌は瞬間移動じゃない!、気付かぬ内に傷が開いてしまうものじゃない!、彼女のかわいい歯のうえにまず、透明な牙の種が。。。食い粕の如く付着し。。。その透明な信管に徐々に。。。エナメル質ではない奇形質の変貌因子が肉付きはじめ。。。それと同時に。。。彼女の肉体の丸みの末端にも。。。牙の因子の散布がはじまる。。。。乳房の傾斜にも鋭利な丸みの花が。。。。ああ、許さない、許さないぞ!、おまえらを許さないぞ!、

あの彼女に「変貌」を垣間見ただなんて豪語して大口叩きながら宣伝しまくる輩を!!

俺は見なかった!、彼女の変貌に向けての軋みを!夜を!その痛みと喜びの変形の音を!
魂の旅を!

俺はそれこそ観せて、魅せてほしいのだと彼女に言ったんだ、
嫌われる覚悟でな!

彼女はその変貌を彼女は達成できる表現召喚の力を持っている乙女だからな。

まだ時はあるぞ。
まだこれからだ。

血を通わせた肉体からしか血は流れない。
血は突然に蒸発などしない。
その季節だ。
血が透明になるまでの季節の情景だ。
それを演じろ。

牙は突如に生えるんじゃない。
牙は、牙は、すべてを宿し奪いながら。。。
肌のように見えるあの肌着で覆いつくした肌をスポンジで撫でている時にはもう生えはじめてる、

ヴァンパイアの乙女に変貌するまでの第永久次性徴期の地獄花絵図を魅せてくれ。

俺を戦慄させてくれ。

男に噛みつくあの瞬間に!ぴょこん!なんてあんなにかわいく飛びつかないでくれ!、ああ!、あの男が倒れないように重力を身体から散らしながらに飛びつく瞬間の軽々しさ!
牙に乙女の魂の鼓動のすべての重力を装填し飛びかかるべきなんだ!
噛まれ血を上空に吸い上げられる瞬間の塔のように血後膠着している男の身体を崩してしまうくらいに!牙に重力を宿せ!!

ああ、見えない牙が!君の大好きなスタッズみたいに君の肉体から何万本も生えるみたいに!


やめてくれ!
あんな!
あんな!
片方の手で男にしがみつき!
もう片方の手で牙を装備するなんて、あまい、甘い、
仕草をみせてくれるな!