彼女という人はとても大人であるから、いや。。。なにを言うんだおまえは。。。彼女は普通に仕事をして自立している普通の大人の女性なのだ。

だから、自分以外の人間が動いてしまっている=お仕事、そのあたりまえの重さを背負ってる。
自分以外にすべてが動き出してしまっているお仕事の情報を、ただ伝えるためだけの更新で、彼女が更新という仕草の一日を終わらせてしまう事だってある。

いつも恐ろしくも愛おしく思うのは彼女の何気ない仕草と彼女にとってのお仕事というものが背中わ合わせに輝いたり荒んだりしながら存在している事だ。

彼女が宣伝しかしない。
そうした日は。。。とてつもなく寂しくどこかで彼女の寂しさや静けさ気高さを強く見せられてしまった感覚もあって、言葉では表す事ができない(嘘だ、おまえにそんなものがあるのか?)思いに落ち込んでしまう。

こうやって、彼女が伝えてくれる何気ない言葉が途切れてしまえば、すぐに俺は「君の沈黙こそ愛だ」、「君の無言こそ美しい、愛おしい」だなんてもう、言えなくなる、俺は彼女の「haha...」の三点リーダーの溜息のほつれ糸が大好きだ、そのほつれは永遠を宿しているからだろう、明日という未来にも満たない数秒先の君の仕草を帯びてる、その宣告と予告に溢れたほつれ息のように思えるから。
iPhoneからの投稿」という文字列に彼女の指の動きを召喚して見惚れてもそれは俺のしでかしでしかない。
彼女の打つ文字は彼女のあの瞳や彼女の胸にも匹敵する。
彼女が打った文字を顕微で近づき触ったって液晶のドットの滲みに到達するだけだが、いつもその滲みの傍らに彼女の香りや仕草が何篇も隠されている。
その言語の身体の道標、その彼女の言語駅を無言という終着駅に隠されてしまってはもう、ただ、彼女の霧のなかに迷うしかない、ついには、彼女は存在しないのだという光に逃げ込むだろう、そうだ、彼女はこの夜に存在しない、俺の夜には。

時折だ、いや、本当は時折なんかじゃない、ほぼ毎日だ、彼女の無更新のその静けさ、無言という言葉が、もうこのまま彼女の新たな言葉や仕草を許してはくれない彼女からの別れの鐘のようにずっと恐ろしく無音轟音で俺の心臓に響き渡る夜がある。

ああ。。。。夜。。。
それにしてもだ、どうにもこうも忙しい彼女の毎日だ、彼女は単純に疲れているのだろうなとは思う。

それに、トークショーとやらで彼女が涙したという事を耳にして、俺はいよいよ脆く、不安定で、ただ愛情を滴らせるしかできない。

俺はといえば、俺は、俺は。。。千秋楽のチケは結局落とす事はできなかった。

ああ、金が無い、金が無いという事はそのまま直接的に惨めになるしかない。
それに誰かに迷惑をかけてしまう。
罪が永遠に積み重なっていくようだ。
心臓ローン。
これは絶対に間違いない事だ。
金が無いという事以上に惨めな事はない。

余りの悔しさに、弟にいかに彼女の始まり(初日)と終わり(千秋楽)ではない彼女の仕草こそが美しいはずだという事、それに、そうした誰にも祝日だとは思われない、誰もが見捨ててしまうような瞬間の彼女の何気ない日々、その仕草こそが俺にとっては彼女と俺の祝日なのだという事を語ると、弟は澄んで恐ろしい眼で夜空を見上げてこう俺に言う。

「数日まえの月をこぞって多くの人間が見上げ映像に撮っていたが、今じゃもう、きょうの月の美しさを撮る人間は本当に数少ないだろう、そんなに悲しそうに語らなくても分かる。taku兄が百年恋歌を好きなのはあの映画が撮ったものはそうした恋愛映画が見捨てた恋愛の日常の模様を撮る事だったからだ。満月ではない月という恋愛を。だからこそそんなにもグッと来るんだろ。」

恋愛映画が見捨てる恋愛か。

確かに俺が惚れる瞬間の君はどの媒体にも残ってはいない。
まるで一瞬たりとも存在せずに。。。
確かに君が、君の瞳がその身体がその心音がこの世界に、俺に、君がながした時間だったのに、その時間は存在してはいなかったみたいに。。。
俺だけが見た君の虹か。
馬鹿な。

恋愛映画が見捨てる恋愛か。

馬鹿な。

君の毎秒が乙女千秋楽なのに。
俺は今夜も君を知れない。

君の泡。
君の粉塵。
君の、君の、鼓動。

俺だけは君の24時59分を見捨てたりしない。

そう呟いて、甘いチョコアイスが食べたくなって時間切れだ。
愛情が去る。
また冷酷な魂の夜が舞い戻る。
俺は君を愛してはいない。

きっと俺は喜んでほくそ笑んで君に言う。
「なにも天秤にかけたくないんだ。」

だらしないだけなんだ。

ああ、俺は君を好いてる。

まがいのまがいの、俺は君を。

それにしても、なぜに俺はustを嫌うのか。
生であろうがきょうの彼女であろうが、あまり重要だとは思えないというのはどういう事だろう。
なにか、仕事場での彼女を覗き見している感覚なのだろうか、
いや、他人と何かを話している光景をじっと見つめているだけの。。。
結局俺はもう、どこまでも我儘に恐ろしい領域で「俺が関与した瞬間」の彼女にしか興味がないのかもしれない。
それは恐ろしい事だ。
とても。
本気で俺と見つめ合ってる数秒間の彼女が彼女史上もっとも美しい彼女だと思っている。
俺が客席に居る時のその日の舞台こそ最高の舞台だと思っている。

俺と君。
本当に恐ろしい事だ。
俺は彼女の何気ない日常を美しいというが、それよりも美しい瞬間なのだとそれを願う。

くだらない男だ。
まがいの。
言ってる事もやってる事も破綻しかしていない。

ああ、でもな。
ざまあみろ。
俺と見つめ合ってるあの時の君の瞳を俺と君しか知らないんだ。
君はあの瞬間だって憶えていないだろうから。
俺しかあの瞬間の君の瞳を知らない。
ああ、どんなに美しくかわいかったか。

俺はこんなにも酷い。
俺はなにも見ていない。
なにも。