やはり初日のチケは手に入れる事はできなかった。
初日や千秋楽という理性が催す祭りを意識してる彼女に立ち会えなくてもいいって口走っても、どうにも彼女のひとつの夢でもあった帝劇の舞台に立つ初日の彼女の物語に、きっとその物語を美しく壊して魅せるだろう表現の爆発や仕草に立ち会えないのかと思うと絶望して息ができなくなりそうにはなるが、12月のなんでもない平日のチケを手に入れて、そうした何気ない日の君こそが美しいはずだって呪文を唱えるよ、会えない日の君がいちばん素敵だよとか、卒業コンの姿よりも普通に時に流されて消え去ってしまった大阪公演の夜の君のほうが素敵だよとか、君の時を僕は天秤にかけてしまうね、いけないよ、全時間君はかわいいはずだから、俺が見られた時だけ、君が物語に触れていない時だけ、贔屓してしまう、俺はきっと君を俺の領域に連れ込みたいんだ、こんなにも黒々とした虹のなかに、君を連れ込もうとしてるんだ、
いけない、いけない、駄目だ、絶対に駄目だ、会えない日には君に会えないことに絶望しよう、会えた日には会えた君に歓喜しよう、冬がはじまる、君の睫毛に冬が見える、